第1章

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.西洋甲冑の姿をしたロボットが去っていく。 定められたノルマを達成したのか、歩みはゆったりしていた。 .その鈍く光る背の更に遠方。 幾度も共に逃げ続けた幼馴染が駆けていく。 徐々に小さくなる姿に安堵する。 ーー振り返らないで。 最後まで見捨てようとしない彼を、半ば蹴り出す勢いで先に行かせた。 諦観や恐怖や、そうした絶望を覗かせない勝気な瞳。 それは、今も前方だけを見据えていればいい。 空を見上げることも、地に目を伏すことも、この枠組みの中では等しく意味の無いことだと私達は知っている。 .刺された腹部。 傷は、背まで貫通している。 いくら圧迫しようと、血が流れ出るのを止めようがない。 浅くなる呼吸。 痛みはとうになかった。 まだ、激痛に苛まれるほうがマシだと思った。 朦朧とする意識に、[死]は近すぎる。 .横たわった円形広場から見える町並み。 囲うように建ち並ぶ家屋は、風化し瓦礫となっているものも多い。 有刺鉄線や剥き出しの鉄骨。 .
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