第1章

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自身が生活する学園【七星-エッグアルクトス-】の中で、これほど荒れ未整備なエリアに逃げ込んでしまったのが最大の失策だ。 と、どこか他人事のように思う。 .学園最西端、【アルカイド】。 ごみ箱として機能する、オブリヴィオンエリア。 円形広場を起点として、裏路地がまた別の裏路地に繋がる、蜘蛛の巣のような領地の形状。 一見、逃げるに適した地形はそこに土地勘があってこそ発揮される。 ただ迷い込んだ私は、捕食される格好の獲物だった。 追い詰められ、刃の切っ先がズッと肌にめり込んだ感触が思い出される。 もう熱を持つことのない躰が、加速度的に冷えていく。 .人工の青空は、灰色のスモッグで隠れている。 死んだ人間や不要になったロボットは、このアルカイドのどこかで焼かれるのだと聞いたことがあった。 スモッグは、きっとそれだ。 .けたたましいサイレンの音がする。 それもどこか遠い。 生存をもたらすサイレンも、今は死刑宣告にしか聞こえなかった。 .
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