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カーテンを締め切っているこの部屋の明かりとなるはパソコン光のみ。
カチャカチャとキーボードの叩く音とヘッドフォンから微かに漏れるゲーム音。
私はじっと画面に映し出される文字を目で追う。
《リノリンは寝なくていいの?
《大丈夫
《もう、朝の五時だけど…?
今やっているのは私の日課となるネットゲーム。
さらに言えばチャット中だ。
ふとパソコン画面の端に表示されている時刻を見れば、
そこには6月3日午前5時00分と表示されていた。
《今日はもう落ちるね
《了解。お疲れ様
___チカイさんがログオフしました
ぐっと伸びをした。
鈍い音が肩から聞こえたが、まぁいつもの事だ。
「疲れた……」
長時間画面を見ているとどうしても目が疲れる。
私は目を閉じて椅子の背もたれに身体を預けた。
これが私の生活だ。
この部屋から出ずに、ゲームをしているだけ。
世間では私みたいな人の事を『ひきこもり』というのだろう。
それでも私はこの日々が何より大切だった。
もちろんこの生活を止める気もない。
だって、今だってほら…
《リノリンさん、協力お願い(>_<)
《了解。今からそっち行くから
ゲームの中では私を必要としてくれる人がいるんだ。
だから、私の存在する場所は此処だけでいい。
…ゲームの中だけが私を必要としてくれるんだから。
私がこのゲームをやり始めて約2ヶ月が経つ。
かなりやり込んだためレベルは結構高くていろんな人に求められるようになった。
強くなればなるほど、人から頼られて、そして私は必要とされる。
ここなら私の居場所があるんだ。
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