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「どうしたんだ。不機嫌だな」
「べっつにーどうもしない、幼なじみのボクなんかより、年下のちっちゃくて守ってあげたくなるような女の子がいいんだよね。噂話なんてつまんない話をする奴なんかより、ああいう女の子のほうがいいんだよね。悠斗のケダモノ、ロリコン」
「ケダモノでも、ロリコンでもない。どうしたんだ。何か嫌なことでもあったのか?」
「その胸に手を当ててよーく聞いてごらんよ。鈍感な悠斗だって何かわかるかもよ」
ふんっとそっぽむいてしまう。我が儘で理不尽なことだとわかっていたけれど、風間由美子は止めることができなかった。不平不満が洪水のように溢れて出てしまう。どうして、この男は気がつかないんだろうと心の奥底に突き刺さった棘がジクジクと痛みーーーーそして、
「…………ふぇ?」
と素っ頓狂な声が出た。身体が軽いのではなくて、誰かに支えられている感じだ。肩と足を支えられ、男の汗と筋肉質な胸板があって、
「なっ、なっなにを、してるのかな!? 悠斗、べっ、別にボクは『こういうこと』をしてほしいと思ったわけでもしてほしいわけでも…………なぃんだょ」
『こういうこと』ーーーーお姫様抱っこをされながらゴニョゴニョと言う。
「違うのか? てっきりお姫様抱っこがしてほしいのかと思ったんだが間違いか」
この無自覚、イケメンと風間由美子は内心で叫ぶ。お姫様抱っこをしてほしい、してほしくないで言えば断然、前者だか、こういった恥ずかしい行為をあっさりやってのけるのは心臓に悪い。
「や、そういうわけじゃないんだけれど、ほら、重いしさ」
あと、いつまでこの姿勢でいるのか不安になってくる。人目のない室内だからとは言え、誰も来ない保証はどこにもないのだ。なんというか吸血鬼にさらわれる美女のようで風間由美子は気恥ずかしさにうつむいて、むーっと唸る。
「これくらい平気だ。鍛えてるし」
「知ってる。悠斗はバイト。がんばってるもんね」
知っていても、いつまでもこのままでいたいと我が儘を言いたくなる。小さな子猫のように背中を丸めて甘えたくなってしまう。
「もう、いい」
「ん?」
「もういい、満足です」
「そうか、で、話が脱線していたが、俺にそっくりの吸血鬼のことなんだがな」
「吸血鬼、うん、あと、おろして」
お姫様抱っこされたまま話をしようとするので風間由美子はそう言った。
「どうやら、湯川夏美
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