第1章

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   父を亡くしたばかりの私は彼に引き取られた。  父は彼の支援者で、私はその父の娘――  ただ、それだけの関係。  ……だったはず。  やって来たのは、山沿いの、すぐ側に川が流れる大きなお屋敷。  彼は、この辺りでもそこそこ知られる家の血筋らしい。  ふと、窓から外を見ると紅葉に色づく木々の中、彼が立っていた。  それはよく見る笑顔じゃなくて、射るような、真剣な眼差し。  秋の日差しに眼鏡のレンズが、きら、と反射する。  その奥で、青い瞳が真っ直ぐに伸ばした右腕の先を見据えている。  なんだろう?  それは、私にとって一番よく知る鉄の塊だった。  ――銃だ!  そう思った瞬間、空を切り裂く銃声。 「――っ!」  思わず両目をぎゅっと閉じて肩を竦めた。 「っ……?」  目を開けるとさっきの真剣な表情は消えていて、代わりに口角をつり上げて、ふっと笑う。  その日の晩は、兎だった。  
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