第1章

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   ――**  そして今、あてがわれた部屋で、私は彼の温もりに溺れている。  目が覚めて傍にあったのは、ただただすがり、溺れた温もり。  ゆっくりと寄りかかった体を起こす。  私、寝ちゃったんだ。  頭に添えてあった手がさらり、髪の毛をすくように離れ……、  すっと立ち上がり、傍にあった心地よい温もりまでもが離れてゆく。 「あ……」  言うより早く、右手に伸ばして絡めた指先が彼を引き留めていた。 「ここに……」  ――ここにいて欲しい。  その言葉を口にできず俯く。  彼は歩みをやめて、踵を返し、私の言いかけた言葉の続きを待っていた。 「もう少し、ここにいてくれませんか?」  ほんの一瞬、彼は眼鏡の奥の青い瞳に驚きの色を窺わせ、けどすぐに、あの、いつもの笑顔を浮かべる。  
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