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まるで、こうなると分かってたと言いたげな……そんな笑顔で、再び傍にきた温もり。
眼鏡は、その人にとって顔の一部だと聞く。
もし、人当たりのいい笑顔を振り撒く彼が表の顔なら、内に秘めた素顔を知りたいと。
辿々しくぎこちない動きで、彼がかけている眼鏡の柄に触れる。
急な視界の変化に、彼は一瞬きゅっと顔をしかめて、ゆっくり瞼を持ち上げた。
なんだ……。
そこには、髪の毛と同じ明るい色の睫毛に縁取られた碧眼、1人の男性の顔があった。
初めて見る顔は眼鏡をかけている時とはまた雰囲気が違っていて、そのまま輪郭をなぞる。
さらり、毛質の違う金色の柔らかな髪が指先に触れた。
さっき彼がしたように、軽く、短く唇を重ねる。
ただ、触れるだけ。
それ以上、何もない。
今の私には、黙って見つめること――それしか手段を知らなかったから。
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