41人が本棚に入れています
本棚に追加
――**
ベッドの縁に腰かけ、ちらり手元を見た。
おざなりになった眼鏡が、そっぽを向いて転がっている。
見えてるものは同じはずなのに、眼鏡の奥の彼の瞳は、何か違う世界を見ているんじゃないかって。
同じ世界を見たい。
もしかして、そうすることで彼の心の中も見えるような、そんな気がして。
――かられた欲求。
私は、手にしていた彼の眼鏡をかけてみる。
くらり、視界がぼやけるだけで、彼と同じ、景色のひとつも見えやしない。
そんなの、初めっから分かってたはず……なのに、仏頂面で唇を尖らせる。
やっぱり……、
――卑怯だ。
私は、ただ視界を悪くするだけの彼の眼鏡をかけたまま、振り返って訊いた。
ねぇ、
「どうして、私なんですか?」
度の合わないレンズの端に覗く彼を確認しようとして、自然と上目遣いになる。
最初のコメントを投稿しよう!