一話 マリッジ・ブルー

14/35
前へ
/35ページ
次へ
周りが白くなる。 洋子は、それを掴もうとしてもがいた。 手を差し伸べる。 けれど、届かない。 不思議な感覚が奥底の方から湧きあがる。 大きな手の平の上でコロコロ弄(もてあそ)ばれる子猫。 洋子はそのイメージが自分と重なり、その姿に酔った。 エンゲージ・リングをもらう前までは、 抱き合い、じっとしているだけでも満足だった。 博之が大好きだった。 博之を大好きな自分。それを意識すると嬉しかった。 幸せだった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

287人が本棚に入れています
本棚に追加