一話 マリッジ・ブルー

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でも、いまは。 「愛している」 いつも口にしていたその言葉が重い。 言いだせなくなっている。 まるで魔法が解けた気分。 いまでも博之を好きなのは確かなはずだ。 そう自分に言い聞かせる。 けれど言葉で自分を説得しても虚(むな)しいだけ。 彼と触れあうと悦びがあった。 それが遠い過去になる。 愛し合った記憶が、 乾いた鱗(うろこ)のようにはがれていった
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