一話 マリッジ・ブルー

2/35
前へ
/35ページ
次へ
カーテンの隙間から差し込む陽光がまぶしい。 全身が気だるく動きたくない。 エアコンが効いていて、 手を滑らせるとベッドのシーツを冷たく感じた。 洋子は隣で小さなイビキをする婚約者。 博之の横顔を眺める。 何度も朝をこうして迎えていた。 彼からエンゲージ・リングを受け取るまでは、 幸福感に満たされていた。 それなのに、リングを指に着けたら、 映画のラスト・シーンを見終わったような感じがした。 あれほど盛り上がっていたのに、 気持ちがすっかり凋(しぼ)んでしまった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

287人が本棚に入れています
本棚に追加