第4章♯2

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「真理恵も愛莉も結婚したんだよねー、今更だけどさ」 小早川さんが遠くを見つめてポツリと言う。 「ほんとだよねー、うちらもそろそろ寿退社しないと、今の会社でお局扱いされそうだよ」 「あはは、お局って……」 ここまでポンポンと続いていた会話が急に途切れる。そして、彼女達は息を合わせたように「はぁ」と溜息をついた。 「いやいや、28歳でお局は早すぎだよ、うちの会社には君たちよりはるかに年上の女性社員なんてゴロゴロいるしさ」 今まで黙って聞いていた俺だが、彼女達の落胆ぶりに慌てて会話に入りこんだ。 「それはそうなんだけどさー、さっきも亜美さんにも同じようなこと言われたし、28歳って世間では結婚適齢期なんだよね」 小早川さんは元気のない声でそう言うと、缶チューハイの上蓋のふちをクルクルと中指でなぞっている。
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