便利屋はルージュをひく

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「段ボールの中に下着とか全部入ってるから。 早く着替えてきて」 和希は言われた通り段ボールを探し出し、その中から下着や靴下を引っ張り出す。 そしてベッドサイドには真新しいブーツがあるのも見つけた。 しかも、革製の黒いミリタリーブーツ。 機能性は最高なのだろうがこんなものを履いて一体どこに行くと言うのだ。 全身真っ黒。 しかも足元にはミリタリーブーツ。 まるでどこぞのスパイだ。 せっかく用意してくれたが、はきなれたスニーカーがいい。 しかし、周りを見渡してもスニーカーが見つからない。 「雲母さん、僕の靴は?」 「捨てた」 「捨てた!?」 「当たり前よ!! あんな汚い靴でこの部屋を動き回ってほしくないの」 そう言えばそうだ。 床は固い木の床だが、雲母も自分も靴のままだ。 「靴を履いたままでいいんですね」 「そう。 いつでも出て行けるように、基本的には靴は脱がないの」 ……いつでも出て行けるように? 雲母の言葉に疑惑は残るが、とにかく早く着替えろと彼女はうるさい。 そそくさと用意された者を身につけ、初めて身につけるミリタリーブーツに四苦八苦しながら部屋を出た。
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