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「こいつのことはどうするんだ……?」
「さっさとやっちまった方がいいんじゃねえかな……」
すると雲母が口をはさむ。
「こいつは私が面倒見てやるから、早く行け」
「すいません雲母さん」
「恩に着るっす」
「ヤクザに感謝されても嬉しくないよ。 早く行け」
「うっす」
二人は雲母にナイフを渡し、走って部屋から出て行った。
それを見た和希は、全身から力が抜けるのを感じ、へなへなとその場に倒れる。
涙が床に溜まりはじめていた。
「あんたね、私は一言も助けるなんて言ってないよ」
「そ、そんな……」
「馬鹿はたくさんいるからねぇ。 あの二人の邪魔をしたのがあんただって分かったら、お前を追ってくるやつはたくさんいる」
和希はもう起き上がる気力もなかった。
「だったら、せめて一発で殺してください……」
「私ね、無駄な人殺しはしないの」
「え?」
「嫌いなんだよね、こういうの。 だから、ちょっと相談なんだけど」
「相談?」
雲母がナイフを放り投げた。
乾いた音をたてて床に転がるナイフ。
彼女は、しゃがんで和希の顔を覗き込むようにして話しはじめる。
その声は、まるで同級生と世間話をするかのようにカジュアルな話し方だった。
「さっき、外から話を聞いてたんだけど」
「……はい」
「あんた、中々肝が据わってるよね」
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