108人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、勘違いしないでね。 わたしは別にここの組の人間じゃないから」
「え、そうなんですか?」
「そうだよ。 言ったでしょ? 便利屋なの。 ペットさがし、浮気調査、心霊関連まで、報酬さえいただければ全部受け付けるのよ。 そんなもんで、色んな世界にお友達を作っておくのは結構役に立つの。 それだけよ。 あんな頭の悪い連中から仕事をもらうほど、私は生活に困ってないわ」
どっかの店のポイントカードを作る理由みたいだな……。
和希の純粋な感想はそんなものだった。
和希の住んでいた世界観からすればとんでもない話をしている筈なのだが、彼女にとっては当然のことなのだろう。
「だからって……」
「私なりにポリシーはあるの。 悪いようにはしない。 約束する」
雲母は和希をまっすぐ見据えていた。
「私は教師が続けられなくなるんですか」
「そうね。 でもその代り、あなたの生徒の安全は保障してあげる。 有村君も含めてね。 それから、給料も奮発するわよ」
生徒の安全。
それは何事にも代えがたい。
どうやって探し出したのか知らないが、和希の家に駆けこんできた有村の必死さは尋常ではなかった。
いくら会ったことが無いとはいえ、やはり自分の生徒だ。
彼を守る為なら、できる限りのことはするべきだと思う。
「さぁ、どうするの?」
「有村は、大丈夫なんですね」
「さっきも言ったでしょう。 わたしは顔が広いの。 ガキの面倒くらい、なんとかなるわよ」
確かに彼女は頼もしいが……。
「保証できますか」
「楽勝」
「そうですか……」
「私のところで、働いてくれる?」
「……はい」
そう言うと、雲母は満足そうにほくそ笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!