私だって、つらい。

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生気のないうつろな目は、ぼんやりとミカの方を向いているが、ミカの姿は映っていないだろう。 突然、1階からガチャンと陶器のような物が割れる音がした。その音が、動く事を忘れて静まり返ってしまっていたミカの心臓を飛び跳ねさせる。 弟の勉強机に置かれた、キャラクター物の時計。その針を見て、そろそろ父親が帰宅する時間だと、気がついた。 父親はウッカリしてる所があるから、玄関にあった花瓶でも割ってしまったのだろうか。よくある事で、しょっちゅうミカと母親は顔を見合わせながら、驚かさないでよ、とか、ケガしてない?と心配するんだ。 そう、今大変な事になっているから、早く助けて。 ウッカリな父親だけどしっかり頼りになる所もある。物事に動じないずっしりした神経を持っていて、頭の回転もいいんだとよく母親から聞いていた。ウッカリなのは、気が抜けてリラックスした時だけなのよと、母親が静かに微笑んでいた。 ミカは手に持っていた子機を放り捨て、階段を駆け下りる。素足の足の裏が滑りそうになりながら、壁に手をつき、リビングのドアの前を駆け抜けた所で、足が勝手に止まった。
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