妄想喫茶

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 うっとりと目を閉じ、本を抱きかかえて陶酔していると、咳払いをする声が聞こえた。  目を開けると、カウンターの中でマスターが、ニヤニヤしながらこちらを見ている。  慌ててごまかすように、わたしはテーブルのココアに手を伸ばす。  カップを口元に近づけた時、ココアの湯気がわたしのメガネを曇らせた。  黒縁のメガネは、高校生の時からつけている物で、少しもお洒落じゃない。  でもこれがないと、視力の悪いわたしは何も見えないのだ。    ココアで一息ついてから、わたしはもう一度本を開いた。  それぞれの物語の最後のページには、イラストが添えられている。    その話には、王子様とお姫様が抱き合っているイラストが描かれていた。  わたしは、イラストの姫と自分を置き換える。目を閉じて、もう一度王子の厚い胸板の中に顔をうずめた。 「はあぁぁ……」  一話目を読み終えたわたしは、大きな甘い溜息を吐いた。
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