妄想喫茶

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「あの……アンドレさんは、なぜここに?」  今度は思い切って、わたしから聞いてみた。 「アンドレデ、イイデス。タマタマ、トオリカカリマシタ」 「たまたま、って……」  よく見ると彼は、上下とも貴族のような白い服を着ていて、その姿はまるで、異国の王子様のように見えた。 「ワタシノカオニ、ナニカツイテイマスカ?」 「えっ……」  小説に出てくる王子様のような彼の姿に、わたしは見とれてしまっていた。 「サユキハ、ホンガスキナンデスネ」  本を抱きしめているわたしを見て、彼はまた、優しく微笑んだ。 「うん、本が大好き」   今度はわたしも、一緒に笑った。 「アンドレ……は、何が好きなの?」 「ソウデスネ……アンドレハ、ピザガスキデス」  こんな風に、わたしが男の人と、普通に会話していることが不思議だった。  それは彼がきっと、妄想の中で恋をした王子様のように、わたしを優しく包み込んでくれる、そんな男の人だったからに違いなかった。  それからわたしたちは、長い時間、他愛もない会話をした。  男の人と話すのが、こんなにも楽しいだなんて、わたしは今まで知らなかった。
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