妄想喫茶

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 本を閉じて顔を上げると、向かいの席にアンドレが座っていた。 「コンニチハ」 「こんにちは」  アンドレは、昨日と同じ、優しい顔で微笑んでいた。 「キョウハ、ドンナオハナシデシタカ?」 「今日はね……」  わたしは、今日読んだ物語の話をした。アンドレは、楽しそうにそれを聞いてくれた。  昨日会ったばかりなのに。  信じられないほどの、イケメンの外国人なのに。  今のわたしはもう、少しも緊張してはいなかった。  アンドレと話すのが、とても楽しかった。  そして次の日も、そのまた次の日も、物語を読み終えて本を閉じると、向かいの席にはアンドレがいた。  わたしはいつの間にか、本を読むことよりも、アンドレと話すことの方が楽しくなっていた。  わたしが今、ときめいているのは、小説の中の王子様じゃなくて、アンドレになんだと気づいたのは、八つめの物語を読み終えた頃だった……
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