四品目 壬生浪の洗礼

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 芹沢を連れて戻ってくると、秀二郎が持ってきたらしい塗り薬を、梅が傷口に塗っているところだった。 手当てが終わるのを待って、芹沢が金を渡す。 「……残りの金だ」  芹沢は梅の怪我について、特に触れることはしなかった。梅は金を受け取り、秀二郎に礼を言うと、早々に立ち去ろうとする。 「ま……待ってください」  それを秀二郎が止めた。 「帰ったら、また酷い目に遭うんどっしゃろ……? そやったら――こんまま、うっとこにおりまへんか?」 「え……」 「あっ、その、へ、変な意味やなくて……! ただ俺は、お梅はんが心配で……ここおってくれはったら、安心やし……そやから……」  秀二郎の声はどんどん尻すぼみになっていく。 「……おおきにありがとうございます」  梅は深々と頭を下げた。 「そやけど、そない気遣いはいりまへん。――うちのことはどうぞ放っといてください」  梅の声は静かだったが、どこか冷ややかな響きがあった。固まる秀二郎に背を向けると、梅は玄関を出ていく。 「ほんなら、おやかまっさんどした」 「あ……」  秀二郎は呼び止めようとするように口を開けたが、結局何も言わなかった。小さくため息をついて、末松が梅のあとを追う。 「中途半端に首突っ込むんは、やめてくれまへんかね……」  去り際呟いた末松の言葉に、秀二郎はうつむくだけだった。
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