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「どうしたんですか? おでこが真っ赤ですよ?」
「沖田さんがやったんでしょう!」
腹が立って、当てられた碁石を投げつける。沖田は顔面目がけて飛んできた碁石を、片手で難なく受け止めた。
「もう少し力を抜いて腕を振りぬいた方が、速く投げられますよ」
「沖田さんは私の野球のコーチか何かですか? そんな助言いりません!」
「ははっ、何言ってるんですか? 相変わらず変な人ですねえ」
「――ああもう! うるせえ!」
我慢の限界に達したのか、突然土方が机を叩いた。
花はその剣幕におののいたが、沖田は笑顔のままで、
「そんなに怒ったらせっかくの男前が台無しですよ」
などと茶目っ気たっぷりに言って、土方の背中を指先でつついた。この人に怖いものはないのだろうか。
「お前ら二人とも、今すぐ出てけ!!」
とうとう筆を置いて、土方が立ち上がる。
「まずいっ! 逃げろ!」
沖田はぱっと身体を起こし、花の腕を引いて走り出した。
「ちょっと、沖田さん! どこ行くんですか!?」
「いいから、いいから!」
軽く笑いながら、沖田は走り続ける。花は足がもつれそうになりながらも、必死でそのあとに付いていった。
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