四品目 壬生浪の洗礼

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 女将に促されて、花と沖田は奥の座敷に向かい合って座る。花は女将がいなくなると、慌てて沖田に顔を寄せた。 「あの、私お金持ってないんですけど……」 「あははっ! 神崎さん、もしかしてそれ気にして来たがらなかったんですか? 全く、野暮なこと言わないでくださいよ」 「え……」  思わず目を丸くする。もしかして奢ってくれるのだろうか。 「全部私が食べるに決まってるでしょう?」 「あっそうですか!」  文句を言うのも馬鹿馬鹿しくなってそっぽを向く。そんな花を見て、沖田はおかしそうに笑った。 「冗談ですよ、ほらどうぞ」  言いながら、運ばれてきたお盆を差し出す。 「え? あ、ありがとうございます……」 「ああ、そっちじゃないですよ」  おしるこに手を伸ばした花に言って、沖田はその隣に置かれた小鉢を顎で示した。 「私、漬物苦手なんです」 「――ありがたくいただきます!」  この男の言葉は二度と信用しない。  心に固く誓ってから、花は小鉢を奪うように取った。 「うーん、甘いものって食べると本当に幸せな気持ちになれますよね」 「よかったですね……」  おいしそうにおしるこを食べる沖田を睨みつつ、漬物を齧る。そこへ総髪に髷を結った、商人風の男が暖簾をくぐって店に入ってきた。
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