四品目 壬生浪の洗礼

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 男から場所を聞くと、花は居ても立ってもいられず走り出した。  沖田からは茶屋にいろと言われていたし、そもそも斬り合いの現場に行くなんて危険だ。巻き込まれて怪我をしたり、死んだりなんて絶対にしたくない。――そう思いながらも、一度走り出してしまった足は止まらなかった。  しばらくすると、遠くに人だかりができているのを見つける。人混みの中からはちらちらと浅葱の色が見え、中心にいるのは浪士組の集団だと分かった。ここから見た限りでは、死体らしきものは見えない。  花はひとまず沖田を捜そうと、背伸びをして視線をめぐらせた。沖田は浅葱色の隊服を着た隊士たちの中で、唯一藍色の着物に袴姿だったため、すぐに見つかった。 「すみません、通してください」  沖田に声をかけようと、人混みを掻き分けて進む。そのとき、 「死ねえぇっ!!」  一人の男が刀を振り上げて、隊士たちに向かっていった。  ――危ない。花はとっさに叫ぼうとしたが、それが声になることはなかった。 「う……ぐっ」  隊士たちに襲いかかった男が、刀を握り締めたまま数歩後ずさる。彼の歩いた地面には、赤い血の跡ができていた。  男の前には、抜身の刀を持った沖田の姿がある。花はその光景を呆然と見つめた。  沖田が、男を斬ったのだ。それを理解するのに、少し時間を要した。 「死にたくなければ刀を置きなさい」  男を睨んだまま、沖田が言い放つ。男は苦しそうに顔を歪めながらも、再び刀を振り上げた。 「くそ……っ!」 「――駄目、逃げて!」
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