四品目 壬生浪の洗礼

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 思わず叫びながら駆け出した。男の腕を掴もうと、必死で手を伸ばす。  次の瞬間、視界が真っ赤に染まった。顔に生温かい飛沫がかかり、目の前の男が糸の切れた操り人形のように、ゆっくりと地面に倒れる。  花は束の間言葉を失って、倒れたままピクリとも動かない男を見下ろした。 「あ、の……」  おそるおそる声をかけて、男の傍に膝をつく。横向きに倒れた男の身体を軽く揺すってみたが、反応はない。  花は男の顔を見ようと、軽く肩を引いた。すると彼の身体はごろんと仰向けに転がり、大きく見開かれた二つの瞳がこちらを向いた。 「――っ!」  声にならない悲鳴を上げて、男から手を離す。距離を取ろうとして、バランスを崩し、尻餅をついた。男はその間も、瞬き一つせず何もない宙を見つめ続ける。 「そん、な……」  頭の中が真っ白で、何も考えられない。身体だけが、壊れたように小刻みに震えていた。 「――どうしてこんなところにいるんですか、神崎さん」  不意に冷ややかな声が頭上から降ってきた。沖田だと気づいたが、顔を上げることさえできない。 「私は動くなと言ったはずですよ。あなたへの疑いはまだ晴れていないんです。そこで勝手な行動をとることが、どういう意味を為すか……分からないわけはないですよね?」
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