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「土方さん」
「なんだ」
「私……子どもを殺してしまいました」
沖田の言葉に土方がゆっくりと振り返る。真意をはかるようなその目から、沖田は逃げるように顔を伏せた。
ぐっしょりと濡れた前髪から、一滴また一滴と水滴が落ちる。それに混じって、瞳から溢れたものが頬を伝い落ちた。
「……私はもう二度と、人を斬るのに躊躇したりしません」
声を震わせながらも、はっきりと誓うように言う。
あの少年を殺したのは、自分の中にあった甘さだ。自分が中途半端な覚悟で刀を振るったせいで、何の罪もない少年を巻き添えにしてしまった。
取り返しのつかないことをしてしまった。
この後悔の前では、人を斬る恐怖も、血の匂いも、ちっぽけなものだった。
――私はもう二度と、迷わない。守るべきものを、守るために。
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