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それからの沖田は、隊務になると人が変わったように刀を振るうようになった。
初めのうちはそれでも血の臭いが気になり、あかぎれができるほど何度も手を洗っていたが、いつしか慣れて何も感じなくなっていった。
隊士の多くはそんな沖田を心ない人斬りだと恐れたが、別段心が動くことはなかった。沖田にとっては近藤の役に立つことと、無駄な犠牲を出さないことだけが大切だったからだ。
だが――自分に斬り殺された死体に怯え、全身で拒絶する花を見たとき、沖田は裏切られたような感覚に襲われた。
花は何度本気で脅しても変わらない態度で接してきて……そんな彼女なら、人を斬る自分を見ても受け入れてくれるのではと、知らず知らずのうちに期待していたのだ。
しかし、それは間違いだった。そのことを理解すると同時に、沖田は花に失望し、いっそ消えていなくなってしまえばいいと思った。
花に刀を向けたときのことを思い出す。
本当に殺すつもりだったわけではない。ただ、そうして脅せば今度こそ逃げ出して、もう二度と顔を合わせずにすむと思ったのだ。――結局花は、山崎に連れられて屯所へ戻っていったが。
花の処分がどうなるのかは分からない。だが一つだけ、もう二度と以前の関係には戻れないということだけは分かっていた。
沖田はこぶしを握り締めて、うつむいた。
別に、花に対して何か特別な感情を抱いていたわけではない。からかうと面白い、暇つぶし程度の存在でしかなかった。
――そう、最近気に入っていた暇つぶしの道具が壊れてなくなってしまった。ただそれだけのことじゃないか。
沖田は自分に言い聞かせる。
だが、たったそれだけのことが、なぜかひどく胸を締め付けた。
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