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蔵の中を調べ尽くす頃には、日はすっかり沈んでしまっていた。
壁に手をつき、力なくその場に座り込む。
……結局、何も見つけられなかった。
このままでは殺されてしまうかもしれないが、気力も体力ももうすっかり尽きてしまっていて、立ち上がることさえできない。
うなだれると、袴の紐に括りつけたストラップの石が、暗闇の中ぼんやりと浮かんで見えた。
そっと手を伸ばし、ストラップに触れてみる。この時代に来たときのように、突然何の前触れもなく、現代に戻される――。そんな奇跡を思い浮かべてみたが、何も起こらない。
目の前の現実は、まるで自分をあざ笑うように、変わらずそこにあり続けた。
「――帰りたい」
ぽつりと呟く。一度言葉にすると、もう止まらなかった。
両手で胸元を握りこみ、うつむいたまま吐き出すように叫ぶ。
「帰りたい、帰りたい、帰りたい……!!」
ここには自分を知っていて、助けてくれる人などどこにもいないのだ。
孤独で、不安で、恐ろしくてたまらない。
堰を切ったように涙が溢れだして、花は声をあげて泣いた。
どうしてか、こんなとき頭に浮かぶのは、距離を置いていたはずの母親の姿だった。
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