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「内通者がいるのか」
「確証はないですけど、俺はそうやないかと思うてます」
「そうか……。まだ公にはしていないが、実は少し前に隊の金が五十両盗まれてな。俺は内部の人間の犯行だろうと踏んでいる。この件も合わせて調べてくれるか」
「承知しました」
「詳細は島田に話してあるから、あとで聞いておけ。あとは――神崎の件か」
土方の発した「神崎」のひとことに、一瞬胸がざわついた。心を落ち着けるように、膝の上に置いた手を握り締める。
「……神崎は目立つ格好してますさかい、茶屋を離れた経緯は聞き込みしたらすぐに分かりました」
そう前置きすると山崎は、店が混んできて花が外へ出たこと、そこで浪士組に死人が出たと聞いて現場へ向かったことを説明した。
「――分かった。総司のせいで余計な仕事増やさせたな」
話を聞き終えると、土方は深いため息をついた。
「正直お前が間に入ってくれて助かった。神崎がいいところの家の娘だったとして、総司が斬ってたら、ただではすまなかっただろうからな」
「……いえ。俺は何も」
視線を落として言って、山崎は腰を上げた。
「神崎はまだ蔵ん中なんで、出してきます」
「ああ、頼んだ」
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