四品目 壬生浪の洗礼

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 土方の部屋を出ると、まっすぐ奥庭の蔵へ向かう。その道すがら、山崎は花を屯所へ連れ戻したときのことを思い出していた。  山崎がそんなことをしたのは、行き過ぎた沖田の行動を止めるためだと土方は思っているようだが、それは違っていた。  あの場に花が来てから沖田に斬られそうになるまでの一部始終を見ていたが、山崎はそのときこれ以上ないほどに苛立っていた。  疑われている身で浪士を助けようとするなど、浅はかにもほどがある。どうしてもっと頭を使って、損得考えて動けないのか。胸がむかついて、気分が悪いくらいだった。  しかしそのあと――花に刀を向ける沖田を見たとき、山崎はとっさに花を助けようと動いた。あのとき二人の間に入ったのは、沖田を止めるためではなく、花を助けるためだったのだ。  山崎はうつむいて唇を引き結んだ。――どうかしている。  結果的にそれが最善の行動だったからよかったものの、もしも本当に花が間者だったなら、自分の行動は浪士組に対する裏切りそのものだった。  本当に……どうかしているとしか思えない。
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