四品目 壬生浪の洗礼

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 錠を外し、蔵の扉を開けると、床に座り込んだ花が黙って見上げてきた。山崎が殴った頬は赤く腫れていて、胸のどこかが少し痛んだ気がした。 「出てき」 「……私のこと、殺すんですか?」  花はこぶしを握りしめて、睨むような目を向ける。 「お前が茶屋離れたんは、浪士組に死人が出たて聞いたからやったんやろ。裏は取れとるさかい、罰受けることはない」  山崎の言葉を聞くと、花は束の間うつむいて、立ち上がった。足早に蔵を出て山崎の脇を通り過ぎようとする。  山崎はそんな花の腕を掴んで止めた。 「どこ行く気や」 「ここを出ていくんです。放してください」  花は顔を背けて腕を引く。山崎は思わずため息をついた。 「そない勝手、許されるわけないやろ。お前まだ自分が疑われとるて分かってへんのか?」 「――分かってますよ!」  叩きつけるような声で花が言った。 「結局山崎さんも、私のことずっと疑ってたんでしょう!? 私は山崎さんのこと信じてたのに……!」  掴んだ花の腕は、怒りからか微かに震えていた。
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