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違うと答えるべきだろう。監察として花の素性を調べ続けるならば、ここで弁解して信用を取り戻さなければならない。――そして、それ自体は決して難しいことではないとも思う。
山崎は小さく息を吸って、口を開いた。
「せや、俺はずっとお前のこと疑っとった」
言った瞬間、花がはっと息をのんだ。目を見開いて、ゆっくりと山崎の方を向く。
山崎はその顔をまっすぐに見つめた。
「ええか、神崎。裏切られたないんやったら、他人を信じるな。――まして、自分のこと犠牲にしてまで、誰かのこと助けようなんて思うな。そないことはええことでもなんでもない。ただのあほのすることや」
淡々と言って聞かせる山崎を、花は呆然と見つめていた。しかしやがて言われていることの意味をのみ込んだのか、顔を歪めて山崎を睨んだ。
「最低……っ」
吐き捨てるように言って、山崎の手を払う。
「そうやな。せやけどここにおる限り、お前はいい加減その甘えた考え改めんと、あっという間に死ぬで」
花は山崎を睨んだまま何も言わない。その目に涙が滲んでいるのに気づき、山崎は踵を返した。
「はよ記憶戻って家帰れたらええな。……俺も、お前はここにおらん方がええと思う」
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