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それからちるとチュニカの二人はドリンクをもう一杯ずつもらってから、会計を頼んだ。
「今日は私の負けです。なので、ちるさんの分も私が支払います。」
涼しげな蒼い瞳を主人に向けた。それに反応したのはちるだ。
「待ってくださーい。わたしはチェスでチュニカさんにいっぱい負けましたよー?負けはわたしではありませんかー?支払いはわたしがしまーす!」
「ですが、ちるさんはチェスは初めてだったのでしょう?勝負にはならないと思います。」
顔をあげて、まっすぐちるをみつめる。その瞳を困ったようにみつめ返すちる。
「――なら、チュニカちゃんがちるちゃんのを、ちるちゃんがチュニカちゃんのを。そうすればいいだろう?」
見守っていた主人が微笑みを浮かべて提案すれば蒼い瞳と黄金の瞳がこちらへ向いた。彼は心底楽しそうに笑って
「普通は勝ちを争うはずだが……どっちも"負け"の引き分けでいいじゃないか。」
きょと、と主人を見ていた二人は顔をお互いに見合せて頷きあった。
「チュニカさん、わたし、チュニカさんに会えて良かったですー。今日とっても楽しかったでーす!」
太陽にも負けないきらきらとした満面の笑顔をチュニカに向けたちる。きらきらなその笑顔を見上げてチュニカは口を開く。
「ちるさん、私も楽しかったです。ありがとうございます。」
ふんわり、目尻が下がり、口角が少し持ち上がって、優しい微笑みがチュニカの顔に浮かんだ。
Fin.
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