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「ねえ。もうすぐだよ、最後の放送。
早くはやく!一緒に観よう?」
はしゃぎながら急かされて、慌てて画面を覗き込んだ。
気づくと私の手から奪われ、彼の手の中にあるスマホ。
画面を慣れた手つきでタップし、放送をオンへと切り替えている様子を、そわそわしながらも、じっと黙って眺める。
画面が切り替わり、隣に並ぶ彼の姿が映し出された。
ハンドカメラを握りしめ、今日の行き先を告げている。
今日で最終回なのか....。
と、淋しい気持ちを抱きながら、画面を見つめる。
「実は、今日のお祝いにね。
テツ君が好きなガトーショコラ作ったんだ。
後で、一緒に食べようね」
「うん」と彼は小さく頷く。
「番組最初はさぁ。
MC初で、ビビってる50.
頑張ってる50って感じだったのに、
なんか、ちょっと、今の僕、余裕持ってたりする?」
くすくすと笑う彼が支える手の中で、テツ君が、楽しそうに笑っている。
”この笑顔が沢山の人に届くといいな”
ぽつりと、心の中で囁いた。
”テツ君のいいところ。
いっぱい、みんなに、届きますように...”
そんな願いをかけながら、光るパネルを見つめる。
真剣な表情で画面にくぎ付けだった彼が、私の耳元に、そっと近づく。
「番組、観終わったらさ...、
ケーキと一緒に、.....も、食べてもいい?」
「......え?」
画面に見入っていた私は、一瞬、彼の言葉を聞き逃した。
ふっと、視線を向けると、照れくさそうな笑顔のテツくんがいる。
私の肩を抱く手に、ほんの少し力が入る。
「一緒に、最終回のお祝いしよーね」
そう、はにかんで笑い、私にキスをした。
(「一徹のトライアングル」最終回スペシャル記念キスフレEND)
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