「旅立つ、アナタへ」

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「ボウズ、船に乗るのか乗らないのか?」 髭面のオジサンが、黙っているアロンに声をかけた。 「ちょっと、待ってください」 アロンが答えるとオジサンは、わたしを見ながら「ああ」と答えた。 「エリーシャ、ごめんね」 「聞いたよ、アロンは戦場に行くって!」 「なんだボウズ、お前さん戦場に行きなさるのかい?」 髭を撫でならが、オジサンがアロンに訊いた。 アロンが黙ってうなづく。 「船長、もう出航する時刻ですぜ」 ひとりの船員さんが、髭のオジサンに報せた。 「ちょっと待ってな。海の風も待ってくれるさ」 そう言って船長さんはパイプに火をつけ、アロンに目配せをした。 「戦場に行くことが、アロンの夢なの?」 「ちがうよ、エリーシャ」 「それじゃあ、夢ってなに?」
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