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* * *
「このっ! キル様! 起きてくださいっ!!」
朝11時。
私はベッドごしに、枕でキル様をたたいた。
「う~ん、あと5ふ~ん……」
「その言葉、20回目です! 早く起きてください!」
この大うつけ。
大層寝相が悪いようだ。
このやりとりを、さっきからかれこれ2時間ほど続けている。
いい加減に起きてほしい。
王子だからといって、朝11時に起床できないとは……まったくもって情けない。
……それにしても、この人の風邪は治ったのだろうか。
昨日は出会った直後、
「ふーん、メイドなんたら号ねー。……寝る」
といってキル様は寝てしまった。
そのときは「まあ風邪ひいてるって言ってたしな」って思っていたけど……。
まさか夕ご飯も食べずにこんな時間まで寝ていられるとは。
朝5時起きの私にとってうらやましい朝だ。
……そう思うと何故かだんだんイライラしてくる。
こんな大うつけが朝11時過ぎまで寝ていて、懸命に働く私が5時起きとかあり得ない。
“王族”っていうのは魔界でも天界でも同じ、自分のことしか考えていないやつばかりだ、全く。
「っていうかいい加減起きてください! そろそろ私、叩きますよ!
いくらなんでも遅すぎです!!」
もうすでに枕で叩いているが、という自分へのつっこみを無視して私は叩くポーズをとる。
が、キル様からの反応なし。
それどころか「くかー」という変な寝音まで聞こえる。
……ああ、うざい。
「起きろっつってるでしょ! このバカ王子が!!」
言った通り、私はキル様の頬を思いきりたたいた。
ペシーーンという強烈な音が、部屋中に鳴り響きわたる。
一瞬、やばいと思い辺りを見渡したが、監視カメラなどはなさそうだ。
叩いたことがバレれば、私は処分間違いなしだろう。
「いったあ!! ちょっと何するのさ!!」
叩かれたキル様は、頬を抑えながら飛び起きた。
顔を抑える手の指から見える頬は、真っ赤になっている。
浮気した彼氏に彼女が平手打ちしてできる紅葉。
これは相当痛かっただろう、と思った。
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