夢物語 一

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「キル様が起きるのがあっんまりにも遅かったので、ほかの人が食べちゃいました」 「な、何!?」 そう聞いた瞬間、キル様は目をまんまるに開いて驚く。 「そんな……朝ごはんはオレの好きなメニューばかりなのに……。 どこのどいつだ!! オレの朝食!!!」 そう言った後も、オレの朝食ぅぅ、とずっと嘆いている。 私はその姿を見て、再び鼻で笑った。 朝食を抜かれるだけでそんなに落ち込むなんて。 さすが王族だ。 そんなんだから、奴隷の食事が一日一食でつらいことが分からないんだ。 「あ!! またおまえ鼻で笑っただろ!! もー、どうしてくれるんだよ、オレの朝食!!」 キル様はフォークを片手にダダをこねる。 顔だけよくて、自分の事しか考えない、最低な奴だ。 「はあ……」  私は溜息を一つついた。 なんだって王様は我儘なんだ。 なんでこうも欲望全開なんだ。 自分ですることなんてできないくせに。 何もできないくせに……。  ……いや、だけどこれは逆にチャンスかもしれない。 キル様を早く起こすための。 そう思った私は、キル様の方を向いて笑顔を向けた。 「大丈夫ですよ、キル様。 明日から早起きすれば、誰もあなたの朝食は食べません」 「何!?」 「ですから、明日から早起きしましょうね」 ニッコリ。 私はキル様にそう告げた。 「な……なんだと……。オレに早起きしろと……?」 まるでこの世の終わり、みたいな顔をしてそれを拒むキル様。 「別に無理して起きなくてもいいですよ? でもまあ、朝食は……」 「うあああ!!! ちょまった!! 朝食抜きはやだ!! ああでも早起き……」 キル様はごろごろごろごろベッドの上で考える。 相当迷っているようだ。 私は溜息を一つついた。 「わかりましたよ、キル様。朝食抜きでいいんですね」 「……ああもう!! わかったよ! 早く起きればいいんだろ!? 早く起きれば!!」 「はい」 「うああ、わかった! 起きる! 早く起きるから、あんたはちゃんと朝食をガートしといてよ!!」 「さすがキル様! えらいです! 早く起きるなんて!」 「だろ!? やっぱオレって天才!!」 「はい! そうですね! キル様天才ですね!」
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