夢物語 一

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半分棒読みでそう言った後、私はよしっと小さくガッツポーズした。 これで『キル様を起こす』という仕事は早く終わりそうだ。 ていうか王族とは単純な人ばかりだな。 まるでバカの族。バカ族――。 そう思うと、ふっと笑みがこぼれた。 「それで……今日の分の朝食はどうなるの?」 さんざん騒いだあと、キル様は私にそう尋ねた。 そういえば、どうなるのだろう。 「……さあ」 本心のままに、答えた。 「……ない感じ?」 「ない感じでございますね」 「まじか……」 「まじですね」 朝食がないというだけで、キル様は涙目になって落ち込んだ。 泣くなバカ王子! これだから王族は。 こちとら一日一食だぞ。 三食のうち一食かけたくらいでそんな落ち込むな! 「キル様、もう11時を過ぎました。 そろそろ昼食の時間です。 あと30分まてば昼食が届くのでは?」 私は思いだしたようにキル様にそう告げた。 これでキル様も納得がいくだろう。 あ、でもまてよ。 これじゃあ意味なかったか。 キル様は『遅く起きても昼食がある』と思ってしまうんじゃ……。 だめだ、今の言葉撤回しよう。 「ああー、そういえば、昼食は3時くらいだった、かしらぁ~……ね?」  最後の方、キル様と目をそらしてそういった。 不自然だっただろうか? さすがに昼食が3時というのはおかしかった、か? また撤回しよう、2時……いや、1時の方がいいか。 「キル様、やはり昼食はいち」 「いや、それ以前にオレのとこに昼食は届かないんだよ……」 昼食は1時です――その言葉を遮り、キル様は溜息をつきながら言った。 「え?」 「いやだからね、あんた耳遠いの? オレ昼食あたんないんだってば」 キル様の言葉に目を疑う私。 昼食が、ない? え? だって、え? 王族、でしょ? 王族は一日三食でしょ? たくさん豪華なもの食べるんでしょ? 「ほらオレ、なんかアレだし? ここから動くことなんかないから、別に昼食はいらないんだよね。 朝食だけあれば一日いれるし」 アレという言葉が気になったが、私は続けて言う。 「ってことは一日一食でございますか?」 「まあ、そゆこと?」 キル様は軽くそう言った。 そうだったのか。 王族に、しかも“王子”なのに“奴隷”と同じ、一日一食の人がいただなんて。
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