3人が本棚に入れています
本棚に追加
「お、同じです!! 私も一日一食です!!」
なぜか奴隷と王子という身分の間での親近感を覚えた。
それがあってか、声のトーンが上がったような気がする。
「え、まじで!? あんたも!?
やっべ、オレら同志じゃん!!」
「はい、そうですね!」
いや、ちょっと『同志』は意味が違うような。
どちらかと言えば『同類』……。
ちょっとまった。
私嫌だよ、この人と『同類』なんて。
同じ馬鹿にはなりたくない。
たとえ奴隷でもそれはちょっと嫌だ。
よし、ここはもう『同志』でいいや。
聞こえいいし。
「はあ、おなかすいた……」
溜息混じりにキル様は呟く。
キル様も“一日一食”。
確かに動く回数はキル様の方が断然少ないけれど、そう思うと朝食抜きは可愛そうに思えてくる。
何か、食べ物は……。
私はうーん、と考え込む。
そして10秒ほどたった後、一つの事を思いついた。
「キル様、私ここに来る前、さくらんぼの木を見つけました」
「さくらんぼの木?」
キル様はさくらんぼを知らないらしく、首をかしげる。
さくらんぼもしらないなんて、本当に王子なのか?
一瞬そう思ったが、すぐに忘れた。
「はい。赤い実です。おいしいですよ」
「へぇー。……それで?」
「私、それ取ってくるんで待っててください」
「え? 取ってくるって……いつ?」
「今に決まってるじゃないですか!」
王宮になっているものを勝手に取るのはいけないかもしれないが……。
まあ、さっといってさっと帰ってこれば大丈夫、バレないだろう。
これでも足と運動神経には自信があるのだ。
私は念入りに準備運動をしてからドアに手をかけた。
「それでは、いってき」
「ちょ、ま、まって、オレも行く!」
私が言い終わる前に、キル様は慌ててベッドから起きあがる。
そんなにさくらんぼの木がみたいのだろうか。
見たところで、全然おもしろくないけど……。
「キル様は待っててもらっていいですよ?
外は寒いですし、その格好じゃ無理です」
「大丈夫! オレ天才だからなんとかなる!」
ああ、だめだこの人……。
天才だからいいとか天才じゃないからとかそういうことじゃない。
それでもって、外の寒さをわかっていない。
最初のコメントを投稿しよう!