夢物語 一

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「お、同じです!! 私も一日一食です!!」 なぜか奴隷と王子という身分の間での親近感を覚えた。 それがあってか、声のトーンが上がったような気がする。 「え、まじで!? あんたも!? やっべ、オレら同志じゃん!!」 「はい、そうですね!」 いや、ちょっと『同志』は意味が違うような。 どちらかと言えば『同類』……。 ちょっとまった。 私嫌だよ、この人と『同類』なんて。 同じ馬鹿にはなりたくない。 たとえ奴隷でもそれはちょっと嫌だ。 よし、ここはもう『同志』でいいや。 聞こえいいし。 「はあ、おなかすいた……」 溜息混じりにキル様は呟く。 キル様も“一日一食”。 確かに動く回数はキル様の方が断然少ないけれど、そう思うと朝食抜きは可愛そうに思えてくる。 何か、食べ物は……。 私はうーん、と考え込む。 そして10秒ほどたった後、一つの事を思いついた。 「キル様、私ここに来る前、さくらんぼの木を見つけました」 「さくらんぼの木?」 キル様はさくらんぼを知らないらしく、首をかしげる。 さくらんぼもしらないなんて、本当に王子なのか? 一瞬そう思ったが、すぐに忘れた。 「はい。赤い実です。おいしいですよ」 「へぇー。……それで?」 「私、それ取ってくるんで待っててください」 「え? 取ってくるって……いつ?」 「今に決まってるじゃないですか!」 王宮になっているものを勝手に取るのはいけないかもしれないが……。 まあ、さっといってさっと帰ってこれば大丈夫、バレないだろう。 これでも足と運動神経には自信があるのだ。  私は念入りに準備運動をしてからドアに手をかけた。 「それでは、いってき」 「ちょ、ま、まって、オレも行く!」  私が言い終わる前に、キル様は慌ててベッドから起きあがる。 そんなにさくらんぼの木がみたいのだろうか。 見たところで、全然おもしろくないけど……。 「キル様は待っててもらっていいですよ? 外は寒いですし、その格好じゃ無理です」 「大丈夫! オレ天才だからなんとかなる!」 ああ、だめだこの人……。 天才だからいいとか天才じゃないからとかそういうことじゃない。 それでもって、外の寒さをわかっていない。
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