夢物語 一

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「そんなこといったって……。 寒いことに変わりはないしさぁ。 それに、王子とか奴隷ってどういう意味? おいしい?」 「は!?」 私は再び目を疑う。 信じられない。いくらテスト0点のひとでも「王子と奴隷」の区別がつかない人はいないだろう。 ああ、もうどうでもいいや。 この人に身分なんて説明してもわからないだろう。 ましてや「おいしい?」と聞いてる時点でこの人は「王子と奴隷」を食べ物だと認識している。 こりゃあだめだ。 「はあ……とにかくキル様は靴を履いて! 私はほんとに慣れてるんで! はかないと死にますよ!!」 「え!? 死ぬ!? え!? それじゃああんたが死ぬんじゃ」 「は?」 「履きます……」 そんなに“死ぬ”ことが嫌だったのか、その言葉でおとなしく靴をはいた。 全くダメな王子だ。 そう思いながら四度目、私はドアノブに手をかけた。 * * *  外に出ると、猛烈な勢いで風がふいた。 キル様の部屋と外の温度差はすごい。 しかも裸足だから下からの寒さが直に伝わってくる。 コートもマフラーも何一つ着ていないから、明日は風邪をひくこと間違いなしだろう。 風邪といえばキル様は治ったのだろうか。 「はっくしょい!!」 そう思うと同時に横からくしゃみが聞こえた。 どうやら風邪は治ってなさそうだ。 ていうかこの人歩くの遅い!! 普通の男子の約3分の一の遅さだ。 そんなチビチビ歩かないでほしい。 全く、さっさと行ってさっさと帰ってこようと思ったのに台無しだ。 「そういやあんた」 すると突然、キル様の声が聞こえた。 そんなに私にかまってほしいのか、キル様は横目でこちらを見る。 「何ですか?」 「あんた何歳だっけ」 何をいいだすかと思えば。 そんなことか。はあ、すごくくだらない。 「14ですけど……」
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