夢物語 一

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くだらないと思いながらも、キル様の目が明らかに答えを待っている目で、つい言ってしまった。 えさを待っている犬みたいだ。全く。 ……キル様が、犬。 「ぷふっ」 やばい、想像すると笑える。 王子が犬だなんて。 王子――バカ族――犬。 もはや、犬。 「あんた、何で笑ったんだよ」 「あ、ああいえ、何でもございませんよ、ぷふっ犬」 「犬!? 犬といったかあんた!  何だよ、オレそんなに犬にみえるか!? 確かに髪の毛ハネてるから犬みたいかもだけどさぁ!! 犬ってあれだろ? 餌待ってる態度なんか超うざいじゃん!!」 そういうキル様、さっきあんた餌をまっている犬の態度をしていたくせに。 これが同族嫌悪? 「ていうかあんたオレと同じ年なんだな」 「え、あ、はあ……え?」 「オレも14なんだぞ!」 なんかえらく堂々と“14”と言ったものだ。 そんなに14歳はえらいものじゃないと思うが。  ていうか私、この人と同じ14歳!? ……なんかいやだ。 「オレと同じ14歳を誇らしく思え!」 「……」 「何だよ、嫌なのか?」 「ええ」 「えー」 キル様は口をとがらせてそう言った。 「ていうかキル様、早く歩いてくださいよ!」 私は後ろを振り返っていった。 キル様は本当にのろい、遅い。 いい加減にしてほしい。 こっちは裸足で歩いてるんだぞ! 王子だからって――!  そう言いかけて、この人が王族だったことを思い出す。 王族は機嫌を損ねると大変だ。 悪い時は首切りになるかもしれない。 いかんいかん、これからは言動に注意しないと。 「はいはいわかりましたよー。 早く歩けばいいんでしょー、もー」 後ろから聞こえたその声は別に怒った様子は感じられなかった。 ひとまず、安心。 「そうだ! 同じ14だしさ、どっちが早く生まれたか勝負しよ!!」 やっと私に追いついたキル様は、私に笑顔をむけてそう言った。 「生まれた日、ですか」 「そそそ!! オレ結構自信あるんだー」 自信たっぷりにキル様はそういう。 そんなに自信があるということは1月1日だったりするのだろうか。 そうだったら私の負けだな。当たり前か。 「んじゃー、いっせーので言うぞ!」
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