夢物語 一

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「いっせーのーで!」 「2月29日」 「3月27日」 最初が、私。 で、少しズレて誇らしげに言ったのが、キル様。 「な……負け、負けただと……!?」 キル様はそんなに悔しかったのか、絶望をあらわにする。 ていうか3月27日でよくそんなに自信があったな。 「私の勝ちでございますね」 「くそおおおおおお」 そう叫ぶとキル様の歩くスピードが遅くなる。 私は「早くいきますよ!」と、キル様の腕を引っ張った。 大丈夫だ。この人はバカだから怒らない。 よくよく考えてみれば「王子と奴隷」の違いも分からない人だ。 そんなひとが「処刑」だの「首切り」だのという単語を知っているわけがない。 「ていうか2月29日ってあれじゃんか! う……うるうる年じゃんか! 4年に1回の!!」 うるうる年なんて嫌だな。 うるう年だよ。 「ってことはあれだよあれ! あんたはまだ14じゃないんだよ!! 4年に1回なんだから!」 キル様はそんなに負けたことが悔しかったのか、懸命に言い訳を探す。 「ま、生きた長さはうるう年だろうと何だろうと、私のほうが長いですけど」 「そーだけどさぁ!!」
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