夢物語 一

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「あ、紅いオンナだ、けがらわしい」 「ママァ、あの子がこっちをみてるよぅ」 「ねえねえ何あのこ、髪が赤いし眼が金色! 変なのぉ」 「見ちゃダメよ! 見ると呪われるんだから」 「呪われるんじゃないよ、しんじゃうんだよ」 「どっちもいっしょじゃない」 「よくもまあこんな通りの真ん中を堂々と」 「全く、奴隷は奴隷らしく隅っこ歩いてほしいわ」 「ふふっ、奴隷じゃないわよ奥様、奴隷のもっと下、奴婢ね」 「ええ? でも噂によるとその奴婢にもこきつかわされてるって」 「じゃあもっと下ね。名前も身分もないくらいもっと下」 「やーいやーい紅いオンナー! オレらはおまえよりも強いんだぜー! ほーらっ!!」 「ぎゃははいい気味! 石ぶつけられて固まってやんの! よわっちー!」  ……私の体に命中した小さな石が、ころころと地面に落ちた。 「気持ちわりい、こっち見んなよ!」  男の子の持っていた石が再び当たると同時にバランスを崩し、担いでいた水がこぼれる。 「うわっ、きたねえ、こぼすなよ」 そういった男の子はもうひとつの水がはいったバケツを倒した。 「……」 「ははっ! いい気味、ざまあ」 私は、思いきりその男の子をにらみつけた。 「なんなの、まじこっち見んな。うざいきもい消えろ」 「魔界の恥。今すぐ消えるか死ね」 「ははっ! 何それ意味いっしょじゃんー! うけるー」 笑っている男の子たちを無視して、私はそのまま通りの真ん中を進んだ。
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