夢物語 一

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 ああ……嫌いだ。 魔王なんて大嫌いだ。 私たち奴隷を“モノ”扱いする。 人として扱ってくれない。 同じ“人”なのに。 同じ環境にいるのに……。  私に名前はない。 名前は必要ないらしい。 私は奴隷ではあるが、生まれながらの奴隷ではなかった。 もとはといえば、普通の平民から生まれた、一般人なのである。 では、何故そんな一般ピーポーの私が奴隷になってしまったか。  ――容姿だ。 容姿がいけなかった。  “魔界”の住民は皆、髪色と眼は黒か紫と決まっている。 けれど私はそれのどれにも当てはまらなかった。 紅いストレートロングの髪、ましてあろうことか金色の瞳なのだ。 私の親は普通なのに、生まれた私はこんな容姿だった。 紅い髪、金色の瞳――。 最悪だった。  血まみれの悪魔――そう呼ばれたこともあっただろう。  そんなことがあり、両親は私のことを必死で隠した。 が、バカなことに私が外へ出てしまい、兵に捕えられたのである。 私をかくまっていた両親も、すぐに見つけ出され兵に捕えられた。 そしてこの始末だ。  一日三食であった食事は一日一食になり、一日中田を耕し、寝床は薄気味の悪い湿った一枚の布団で、五人で寝る。 田を耕している間、弱音を吐いたらすぐに殺される。 朝食は食べられるのかどうかよくわからない黒い物体。 病気になったら特別部屋にいれられ、治るまで出してもらえない。 母も父もその病気小屋にいれられ死んだ。  そんなひどい奴隷生活を、私は五歳の時から九年間、毎日続けてきた。 これが奴隷生活であり、奴隷に生まれてきたものは一生そうやって生きていく。 許せない。何で私がこんな生活をしなくちゃならない? 同じ人間なのに、同じなのに、何が違う。  一体誰だ。私にこんなことをさせるのは。  ――王様だ。  王様が決めたのだ。自分の暮らしを豊かにするために。 民衆から金を奪い取り、奴隷を売りさばき、贅沢な暮しをする。 許せなかった。 いつか復讐してやる――。 それだけの思いで今まで生きてきた。
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