3人が本棚に入れています
本棚に追加
ああ……嫌いだ。
魔王なんて大嫌いだ。
私たち奴隷を“モノ”扱いする。
人として扱ってくれない。
同じ“人”なのに。
同じ環境にいるのに……。
私に名前はない。
名前は必要ないらしい。
私は奴隷ではあるが、生まれながらの奴隷ではなかった。
もとはといえば、普通の平民から生まれた、一般人なのである。
では、何故そんな一般ピーポーの私が奴隷になってしまったか。
――容姿だ。
容姿がいけなかった。
“魔界”の住民は皆、髪色と眼は黒か紫と決まっている。
けれど私はそれのどれにも当てはまらなかった。
紅いストレートロングの髪、ましてあろうことか金色の瞳なのだ。
私の親は普通なのに、生まれた私はこんな容姿だった。
紅い髪、金色の瞳――。
最悪だった。
血まみれの悪魔――そう呼ばれたこともあっただろう。
そんなことがあり、両親は私のことを必死で隠した。
が、バカなことに私が外へ出てしまい、兵に捕えられたのである。
私をかくまっていた両親も、すぐに見つけ出され兵に捕えられた。
そしてこの始末だ。
一日三食であった食事は一日一食になり、一日中田を耕し、寝床は薄気味の悪い湿った一枚の布団で、五人で寝る。
田を耕している間、弱音を吐いたらすぐに殺される。
朝食は食べられるのかどうかよくわからない黒い物体。
病気になったら特別部屋にいれられ、治るまで出してもらえない。
母も父もその病気小屋にいれられ死んだ。
そんなひどい奴隷生活を、私は五歳の時から九年間、毎日続けてきた。
これが奴隷生活であり、奴隷に生まれてきたものは一生そうやって生きていく。
許せない。何で私がこんな生活をしなくちゃならない?
同じ人間なのに、同じなのに、何が違う。
一体誰だ。私にこんなことをさせるのは。
――王様だ。
王様が決めたのだ。自分の暮らしを豊かにするために。
民衆から金を奪い取り、奴隷を売りさばき、贅沢な暮しをする。
許せなかった。
いつか復讐してやる――。
それだけの思いで今まで生きてきた。
最初のコメントを投稿しよう!