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「やめい!」
どれくらいたっただろうか。
いつのまにか魔王が小屋に来ていて、兵士のムチを取り上げていた。
「おぬし、まだ生きてるか?」
「……」
返事をしない私を見た魔王は、兵士を使って呼吸を確認させた。
「い、生きてます、正常です」
「ならよい。おぬしにいい話がある」
魔王はそう言い、足と手の縄をほどいた。
「実は、天界での働き手が不足しているらしい」
振りほどいた縄を捨てながら、魔王はそういった。
天界――この魔界とはちょうど正反対の国だ。
「おぬしには、天界へ行ってもらう。
なあに、道は私が直々に案内する。どうだ?」
「魔王様が直々に、ですか!?」
隣にいた兵士が驚いた顔をした。
「そうだ。いい話だろう」
どうして魔王がそんな話を私に持ち出すか意味がわからなかった。
が、この地を離れられるならもうどこでもいいと思った。
それに、魔王が直々に、ということは私が暗殺できる可能性が高くなる。
こくり、とうなずいた。
「そうか。では明日、門の前にいろ」
またうなずくと、魔王は静かに小屋を出て行った。
その際、兵士も一緒に出て行った。
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