夢物語 一

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「やめい!」 どれくらいたっただろうか。 いつのまにか魔王が小屋に来ていて、兵士のムチを取り上げていた。 「おぬし、まだ生きてるか?」 「……」 返事をしない私を見た魔王は、兵士を使って呼吸を確認させた。 「い、生きてます、正常です」 「ならよい。おぬしにいい話がある」 魔王はそう言い、足と手の縄をほどいた。 「実は、天界での働き手が不足しているらしい」 振りほどいた縄を捨てながら、魔王はそういった。 天界――この魔界とはちょうど正反対の国だ。 「おぬしには、天界へ行ってもらう。 なあに、道は私が直々に案内する。どうだ?」 「魔王様が直々に、ですか!?」 隣にいた兵士が驚いた顔をした。 「そうだ。いい話だろう」 どうして魔王がそんな話を私に持ち出すか意味がわからなかった。 が、この地を離れられるならもうどこでもいいと思った。 それに、魔王が直々に、ということは私が暗殺できる可能性が高くなる。 こくり、とうなずいた。 「そうか。では明日、門の前にいろ」 またうなずくと、魔王は静かに小屋を出て行った。 その際、兵士も一緒に出て行った。
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