夢物語 一

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 いかにも高級そうな王宮では、デブデブに太った王様がデデンと玉座に座っていた。 いかにも馬鹿そうな王様だった。 いや、馬鹿であった。 ……王様は一人で裸踊りしていたのである。  こんな馬鹿な王様がこの国を支えているとは……この国は大丈夫なのだろうか。 心の底からそう思った。 「わはっは! 失敬失敬。 おぬしから出向いてくれるとはのう!  うれしい限りじゃ! ほら、もっと飲め飲め!」 「たまにはわしからでもいいじゃろう?」 二人の王様は向かい合って酒を交わしていた。 私は魔王のとなりにちょこん、と座っていた。 今日、魔王の暗殺をはからっていたがそれは無理だった。 今朝門の前で待っていたところ、魔王は“転送システム”とかいうものを持ってきたのだ。 それは大変便利グッズで、行きたい場所に一瞬でいけるのだという。 ただ制限があり、遠い場所ほど行ける人数(量)は少なくなるらしい。 幸い、天界と魔界は正反対側であっても場所的に半日しかかからないということだった。 そういうわけで、暗殺などする暇なく、天界についてしまったのだ。 「それで、魔王よ、なぜまた天界に?」 天界の王が魔王に聞いた。 「なんだ、忘れていたのか? おぬしが働き手がほしいのだと言ったのだろう」 「ああそうじゃったそうじゃった! 忘れておったわ! んーと、じゃあおぬし……キルに仕えてやってくれんかの」 突然、王様は私にそう言った。 「わしの息子じゃ。 ちょっと具合が悪くてのう。少し離れに暮らしているんじゃ。 キルにはつきっきりの執事が一人おるんじゃがのう、数日前、地元にかえるとかなんだとかで。 とにかく今は世話役がいないんじゃ。 それにあいつ、妙に人見知りでその執事以外誰もうけつけん。 ということでおぬしが代わりに面倒を見てやってくれ。 きちんとできるなら三食用意する。 それと不便なことに王宮から離れまでは一日かかる。 食事くらいの軽いものなら転送できるが、さすがにおぬし一人は転送できぬ。 とうことでキルと同じ部屋に住まわせてもらってくれ。 大丈夫だ、あの離れめっちゃ広いしな! わはは! 部屋なんぞいくらでもあるわ! ってことでよろしく」
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