カイ

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帝国領上空。 コルポシア軍製の兵員輸送両翼機『アリオール』が三機飛行していた。 先頭を飛ぶ一機にはこの部隊の隊長が搭乗しており、部下達と資料を広げながら今回の任務を確認している。 リーダー格の兵士は他の兵士より一回り大きく、ソフトモヒカンの大柄な男だ。 「レオ・アークレット、年齢は二十一歳。職業は……なんだこれは、メ、メーチェ……メーチェナリー?」 「マーセナリー、ロディニアで傭兵稼業といいます」 「ふむ、ロディニア言葉はわからん。しかしアークレットといえばあのアークレットか?」 リーダー格の言葉にゴーグルをかけた士官がうなずいた。 「アークレット姓はロディニアでもごくわずかで、しかも例の地域のみと言っても過言ではありません」 「ロディニアの英雄、ケリー・アークレットの故郷か……」 「徴兵前までは酒場を営んでいたとか、妻子もいたようなのでレオ君とケリー氏の親族的繋がりは十分可能性があります」 「なるほどな。将軍達が欲しがるわけだ」 レオ・アークレットの資料は都市部の役所に保存されていた戸籍謄本を参考に制作された。 生年月日や出生地、血液型に家族構成。 だが、レオについての情報は黒塗りされた部分がほとんどだった。 例えば家族構成に母親の名前があっても父親の欄は見事に黒塗りされている。 これではケリー・アークレットとの親族的繋がりに信憑性が欠ける、決定打になりかねる。 「かたやコルポシアからは『財宝隠し』で忌み嫌われ、英雄扱いされたロディニアからも『反逆者』として扱われる。ケリー氏は不敏な人物ですね」 「私はそうは思わんな」 リーダー格の男はレオの顔写真をじっと見た。 なるほど、言われて見れば士官学校の歴史学で見たロディニアの英雄と目つきが似ている気がする。 この煮ても焼いても食えなさそうな若者はあの英雄と関係があるのだろうか。 「ニキータ大尉!降下ポイントまであと十分です!」 「よし!各員、装備を整え降下用意」 ニキータと呼ばれたリーダー格の男もフードを被り、ライフルにマガジンを装填した。 他の部下達も準備にかかる。 「目的はレオ・アークレットの確保!傷でもつけたら銃殺では済まされんぞ。その他民間人、同志以外への発砲は全て許可する」
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