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「エルリア、攻撃許可だ」
『了解したけど、今はホルストでしょ!?』
「……めんどくせえ」
黒髪の男は南門で仁王立ちしていた。
南門といっても立派な扉があるわけではなく、『カイへようこそ』と書かれたアーチがあるだけだ。
扉があって、もう少し警備が厳重ならば賊も文字通りの門前払いができるのだが。
『見えたよ』
「数は?派閥はわかるか」
『数は十五、全員頭に赤い布を巻いているから……』
「ロディニア解放戦線か」
ロディニア解放戦線は先の大戦でロディニアの領土を理不尽な協定により、奪われたと思う者達が集まった武装勢力だ。
主に抗議活動として過激なアピールを行う。
……というのは名目上で、解放を掲げる割には帝国軍領の町から略奪、破壊を行うので賊と変わりなく帝国軍は撲滅対象として定めている。
その特徴は赤い布を身につけていること。
終戦後にセレホドー政権を転覆させたクーデター派の象徴が『赤』であった。
「エルリア、こちらでも視認した」
『……何の為のコードネームなの?』
レイピアを自称する黒髪男は腰から長剣を抜いた。
刃渡り百センチ、刀身は全て黒、それが太陽に照らされギラリと光る。
既に目の前には解放戦線の男達が集まっていた。
レイピアを見るや、剣を構える、銃を向けるなど殺意に溢れている。
そのうちの屈強な面構えの男が前に出た。
「我々はロディニア解放戦線だ。カイは古来より、ロディニアにあるべき土地である。帝国よりカイを解放する」
「具体的にどうやって?」
「無論、話し合いに応じる用意はある」
「条件は?」
「帝国軍の撤退、それにカイの町長を我々の幹部に代わり本来あるべき政治をする」
「なるほど……」
あえてレイピアは剣を下ろして悩んでみせた。
解放戦線の男達もレイピアの姿に気を許したのか、武器を下ろす。
それが合図だった。
ドン!
腹に響くような鈍い音。
それと同時に男が一人倒れた。
「なっ、くそっ!!」
慌ててリーダー各の男も銃を構えるが、そのライフルはレイピアにより真っ二つに。
「ふん」
次の瞬間には、男は崩れ落ちレイピアに長剣はどす黒い血が滴っていた。
「こ、こいつを殺せ!!」
一人の男の呼び掛けも虚しく、再度聞こえた腹に響く音により、もう声を上げることはなかった。
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