カイ

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「この銃声が聞こえるか?」 「ええ、我が軍の武器ではないですね」 「十中八九ロディニアのライフルだな」 しかも旧式、とニキータは付け加えた。 コンパスを見て方向をみるに南の方角。 偵察部隊の情報では、今日この町にロディニア解放戦線の連中が襲撃にくるとのことだった。 銃声は旧式のロディニア製、コルポシア製の音は全くしない。 ふう、とニキータは一息ついて忌ま忌ましい降下用の装備を外した。 間違いない、賊は現れている。 場所は恐らく南の方、帝国軍の駐屯部隊は交戦しているだろうか。 あるいは……もしアークレットの血が流れている者がいれば。 「南へ移動するぞ」 ニキータを先頭にライフルを構えた兵士が八人続く。 街中は昼間とは思えないほど静まり返っていた。 建物の扉や窓は閉められ、ご丁寧にカーテンまで閉めている所もある。 ニキータの隣に並んだゴーグルの兵士がボソリと問い掛ける。 「いると思いますか?レオ・アークレット」 「私はいると確信している」 「その根拠は?」 「勘だ」 「勘ですか」 「勘ほど頼りになるものはない。これまでの経験、それを踏まえた考え。そして運。なにより根拠が無いのは楽だろう?」 「だいぶ危なっかしいですが……」 「その時は名誉の負傷で特別賞与と階級だ、運が良ければ二階級特進で家族は一生楽できる」 「痛いのは嫌ですね」 「ああ、眉間に穴が空こうが尻に穴が空こうが賞与は賞与だ」 上官のジョークにゴーグルの兵士は受け流すように苦笑いをしただけだった。 だが不思議と不信感は生まれない。 軽口や皮肉を連発するニキータだが確実に任務をこなす、そんな上官を兵士達は信頼し尊敬していた。 「止まれ!!」 不意の怒鳴り声に、反射的にライフルを向ける。 後ろからだ。 ニキータ達がライフルを向けた方には似たような装備の帝国兵がライフルを構えていた。 「貴様達は何者だ!所属を明かせ!」 「同業者だ同業者、見てわかるだろう。今急いでいるんだ」 「ならば早く所属を明かせ!」 はあ、とニキータは溜息をついた。 なぜこう軍人は融通がきかないのだろう。 ニキータは尻のポケットから手帳を取り出すと、それを帝国軍兵に見せ付けた。 それは使いふるした革製の表紙で鯱が刺繍されていた。 「我々は帝国軍所属特務作戦部隊『カサートカ』だ」
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