カイ

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レイピアが黒剣を振るたびに賊は草を刈られるように倒されていった。 剣を持つ者も銃を持つ者も。 一瞬のためらいや怯みが命を落とす。 剣を持つ者はかわされたところ一閃され銃を持つ者は得物ごと刈り取られた。 既にレイピアの背後には数人の賊が倒されていた。 「こ、こいつめちゃくちゃ強いぞ!」 「撃ちまくれ!接近を許すな!」 銃撃にも怯まずレイピアは突撃した。 切り付けた黒剣は賊の腕を刈り取り、ライフルを持ったままの右腕が血と銃弾を撒き散らしながら宙を舞う。 賊は苦痛の悲鳴を上げてその場に倒れ込んだ。 「あ、悪魔だ!」 「言い残すことはそれだけか?」 賊の残りは三人。 ライフルを持つ者はおらず、剣を構えてレイピアと一定の距離を取っていた。 レイピアが一歩進めば賊は一歩下がる。 賊から歩みを進めることはなかった。 「エルリア、後は任せろ」 『……はあ、わかった』 これでスナイパーからの援護射撃は受けられない。 ふう、とレイピアは呼吸を整え黒剣の血を飛ばした。 赤黒いその液体は黒剣が溶けたようにも見える。 「経費削減だと言ってたしな」 「なにをごちゃごちゃと!」 賊の切りをレイピアはヒラリと回避。 続いての横切りに合わせて、相手に背を向けるようにしゃがみ、そして黒剣が賊の腹を裂く。 「あと二人……」 「く、くそっ!」 腹を裂かれた賊は音も無く崩れた。 続く賊はレイピアに連続技を仕掛けた。 斬撃の連続、だが剣を振れば振るだけレイピアは回避する。 まるでカスリもしない剣に賊は焦りと、疲労感を覚えた。 「疲れただろ」 「ぬっ、ぬかせ!」 剣のスピード、威力共に落ち込んでいる、呼吸も荒い。 最初よりずいぶんと緩くなった剣の一振りに黒剣が対応する。 黒剣と賊の剣が接触した瞬間、賊の剣は砕け散った。 驚いた賊、だがその表情は苦痛の表情に変わった。 黒剣の剣先は賊を貫き、背中から顔を出していた。 「あ、悪魔め……」 突き刺された賊はボソリと、だがハッキリ聞こえた。 俺が悪魔だと……ならば町を襲い略奪を繰り返すお前達は何なんだ。 レイピアは決して声には出さなかった。 声を発しなくなった賊を無表情で地面に倒す。 残りは一人、剣を構えたレイピアは賊に歩みを進めた。
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