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「そこまでだ!!」
黒剣を一振りしようとした時だった。
良く通る、地を這うような低い声がレイピアの動作を止めた。
「そこまでだ、剣を引け」
現れたのは帝国軍。
全員がライフルを構え、銃口はレイピアと賊に向けられていた。
帝国軍の先陣を切るのは一回り大きな、ソフトモヒカンの男。
並ぶようにして近付いてくる兵士は無駄な動きひとつ見せない。
門の方にはまた別の部隊だろうか、兵士達がこの事態を静観するようにズラリと並んでいた。
「黒髪の男、貴様の身分を明かせ」
「……」
「お前に聞いているんだ!!」
「よさないか」
割って入ったのは大柄な男。
肩には部隊のエンブレムだろうか、鯱のワッペンが付いている。
大柄な男は構えたライフルを下ろし、あくまで無抵抗をアピールした。
「すまんな、よその部隊は少々気が立っているんだ。おかげで礼儀に欠ける」
「……この件は帝国軍からの要請のはずだが」
「ああ、確かに私の上官が君達に支援要請を出したんだ」
この発言に、レイピアに強気だった兵士が驚きの表情を見せた。
そんなことは気にせず大柄な男は続ける。
「私はニキータ・ヴェルトフ、階級は大尉。帝国軍の特務部隊『カサートカ』を率いている」
「……レオ・アークレット、この町の自警団と傭兵を兼ねている」
なるほど、とニキータは笑みを浮かべた。
傍らのゴーグルの兵士も喜んでいるようだ。何かクイズに正解した、問題が解けたというような感じに。
レオはわからなかった。
何故この兵士達は笑みを浮かべているのか……その笑みは決して獲物を舌なめずりする獣のような物ではなく、敵意は全く感じない。
「俺に何か用か?生憎、どっかのだれかが出した仕事をこなしている」
「その賊は私達が引き受けよう。何も殺すことが解決策ではないぞ。ドミトリー、頼む」
「はっ!」
ドミトリーと呼ばれたゴーグルの兵士は賊にライフルを向けた。
賊もそれに反応して、剣を振る。
だが剣はライフルの銃剣に流され、その返し刀と言わんばかりに銃床が賊の顔面にヒット。
その場で賊は卒倒した。
「これでよし、レオ君。そして君の仲間達と話がしたい」
レオはニキータを疑いの目で睨みつけていた。
この男は信用できるのか?
そして無線機に一言。
「お前ら……集合だ」
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